福島弁全国普及プロジェクト

福島弁って、癒される?

福島弁には、
福島のあったかい人柄がつまっている。
地元の人からは「福島弁ってちょっとださい」と思われがちだけど、
福島弁で話すと、ちょっとなごむ。
優しくなれる。空気があたたかくなる。
これって、コミュニケーション上の「効果」と言えるんじゃないか。
福島弁のさまざまな効果を実証し、
福島弁の使用を全国に広げていく
前代未聞のプロジェクトが、
「福島弁全国普及プロジェクト」です。
そして、福島弁を通して、福島の魅力を、
全国の方々に知ってもらうことを目指します。

PROJECT.01

福島弁×子育て応援 福島弁の絵本を使えば、赤ちゃんの寝かしつけが00秒早くなる!?

福島弁を聞くと、気分が落ち着く

という仮説をもとに、子育て応援のための実証実験を行いました。標準語と福島弁それぞれの<絵本>を用意し、 数組のご家族に絵本の読み聞かせでお子さんが寝付くまでの時間を計測して貰いました。標準語の絵本を読んだときと福島弁の絵本を読んだときとで、赤ちゃんが寝付くまでの時間に差は生まれるのか?果たして、幼児に対しても福島弁は効果的なのか?

気になる実験結果は、こちらの動画から

PROJECT.02

福島弁×コロナ禍のコミュニケーション オンライン会議をすべて福島弁にすれば笑顔は00%増える!?

福島弁は標準語よりも緊張しない

という仮説をもとに、withコロナ期での人々のコミュニケーション促進に貢献するための実験を行いました。5:5の2つのグループをつくり、片方のグループには 標準語での会議を、もう片方のグループには 福島弁だけを使った会議をして貰い、どちらのグループの方が 会議中、笑顔になる回数が多かったかを計測。果たして、福島弁はデジタル社会にも通用するのか?

気になる実験結果は、こちらの動画から

PROJECT.03

福島弁を解析せよ 福島弁アンケート調査

Project.01と02で立てた仮説の他にも、 一見怖そうな人が福島弁を使うと優しく感じる?異性が福島弁を使っていると魅力的に見える?など、少しクスッとするようなアンケート項目11問を、福島県内在住の1,000名に調査しました。(分析:福島大学人間発達文化学類・教授 半沢康 先生)

Q1福島弁を誇りに思っていますか?

このように、悲しい現状。まずは県内在住者への啓蒙が必要。しかし、数値が高かった項目もありました。

Q2福島弁を聞くと気分が落ち着く

福島弁ネイティブ層

0~15歳の言語形成期に福島県内に在住していた人

ノンネイティブ層

言語形成期に福島県外にいた人

“言語が定着する15歳までの間に福島県内に済んでいた”<ネイティブ>層だけでなく、ノンネイティブ層も【福島弁を聞くと気分が落ち着く】と回答した人が半数近くにのぼった。

Q3福島弁は親しみやすいイメージがある

福島弁ネイティブ層

0~15歳の言語形成期に福島県内に在住していた人

ノンネイティブ層

言語形成期に福島県外にいた人

<0~15歳の言語形成期に、福島県内外どちらにいたか>に関係なく、親しみやすいというイメージは高い傾向にあった。

他にも、いくつかの質問を
1000名の福島県民の皆さまに
お聞きしました。

Q4あなたは普段、どのくらい福島弁を話していますか?<年代別>

50代が最も福島弁利用率が高い結果に。60代以上は「福島弁」と捉えるハードルが違う?

福島県内で生まれ育った885名中、「普段方言を話している」(「ほとんど方言」「共通語も混ざるが方言が多い」「共通語と方言が半々」の合計)と回答した人は、全体でおおよそ60%でした。

もっとも、これはあくまでも「自己認識」による評価なので、実態とはズレる可能性もあります。たとえば年配の方は,共通語化が進む前の古い方言の姿を知っているので,それと比較し「自分の言葉は方言が少ない」と捉えがちです。一方,30~50代の方は,少しアクセントが違うだけでも敏感に反応し「自分は方言を話している」と自己評価することがあります。高年層の回答比率が中年層より低いのにはそうした事情がありそうです。

また,福島県をはじめ,各地には,実際には方言なのに,地元の人が共通語と信じて話している「気づかない方言」というものが存在します。「方言をあまり使わない」と回答した人も,こうした方言を気づかずに使っていることが多いので,福島県民の方言使用はもう少し高い可能性があります。

Q5あなたは普段、どのくらい福島弁を話していますか?<地域別>

福島弁をもっとも使う地域は「会津」地域。 関東からの距離に関係性あり?

福島県内出身者885名を出身地域ごと(県北,県中,県南,会津,南会津,相双,いわきの8地域)に分類し,前項の回答結果(「ほとんど方言」「共通語も混ざるが方言が多い」「共通語と方言が半々」の合計)を地域別に示しました。南会津地域出身の方がもっとも「方言を使う」と回答する比率が高く,県南地域出身の人はあまり方言を使わないと認識する傾向があります。

2000年代初頭に,福島大学が白河市内で方言調査を行った際には「このへんは訛っているけど方言は使わない」という声がよく聞かれ,また一定数の人が「白河は東北地方ではなく関東地方だと思う」と回答しています。県南地域の人は関東地方へのあこがれ・志向が強く,そうした心性が「福島弁を使わない」という自己認識へ影響するのかもしれません。

しかしながら先に述べた「気づかない方言」は,白河市内でも90%近くの人が(方言と気づかずに)使っていて,実際にはこの地域の方々の間でも福島弁が話されていることが分かります。

Q6あなたは福島弁が好きですか<年代別>

全年代共通で「好き」は50〜60%程度。「どちらでもない」の無関心層が啓発のカギ

福島県出身885名中,福島弁が好き(「好き」「どちらかというと好き」の合計)な人は50%強。特に年配の人は方言好きが多い傾向があります。調査時期や方法がやや異なるため厳密な比較はできませんが,2015年に行われた全国調査(田中ゆかり他2016)の結果では,東北6県出身者全体で「地元の方言が好き」と回答している人が60%弱いるので,それを参照すると,他の東北5県に比べ,福島県民は自県の方言をあまり好んでいないといえそうです。

もっとも,明確に「方言が嫌い」と回答した人は少数派(10%強)で,残りは「どちらでもない」という無関心層です。これは県外出身者(115名)も同様で,この層では「どちらでもない」が50%を超えます。福島県以外の方々に福島弁をアピールするには,こうした「無関心層」への働きかけが効果的かもしれません。

文献
田中ゆかり・林直樹・前田忠彦・相澤正夫2016「1万人調査からみた最新の方言・共通語意識:「2015年全国方言意識Web調査」の報告」『国立国語研究所論集』11

Q7あなたは、福島弁を誇りに思っていますか?<年代別>

福島弁の誇りを再認識するためには〜方言の特長と歴史〜

Q1の質問、「福島弁を誇りに思う」(「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計)と回答した人の世代別集計結果です(福島県出身者885名)。全体に40%台を推移し,過半数に届きません。前項の結果とあわせてみても,福島県民は総じて福島弁に冷淡なようです。

福島弁は無アクセント方言と呼ばれ,共通語のように「雨(メ)と飴(ア)」や「切る(ル)と着る(キ)」といった同音異義語を発音し分けることがありません(共通語では太字の音を高く発音)。これはよく東京の人に訛っているとからかわれますが,実は言語学的に見ると,福島の無アクセントは,アクセントの変化が最も早く進行した結果,区別が失われてしまったものであり,いわば日本語の最先端のアクセントであると考えられています。現在共通語として話されている東京のアクセントは,日本語全体の歴史で見れば,古い,一時代前のアクセントなのです。

このほかに,最近よく耳にするようになった「違くて・違かった」という言い方も,もともとは100年以上前に福島県付近で生まれ,その後,東京や全国の若い人が真似し始めたものと言われています。このように福島弁は日本語をリードする,トップランナーの言葉であることを,もっと県民の皆さんに知ってもらいたいと思います。

Q8異性が福島弁を話していると、魅力的に感じる

方言は可愛い?新しい価値をつくるための発信方法

かつて「誤ったことば・汚いことば」とみなされ,矯正,撲滅の対象となった方言は,平成期以降に価値の見直しが進み,地域の個性をあらわすことばであり,使って楽しむことばと位置付けられるようになりました(井上史雄2000)。2010年前後には「方言ブーム」が起こり,「方言を話す女の子はかわいい」という言説が首都圏の若い世代の間で広まりました。田中ゆかり2011の報告では,当時の首都圏大学生の約58%が「東北弁はかわいい」と回答しています。

こうした背景の元,福島弁のかわいらしさについて調査しましたが,残念ながらこうした評価は福島弁には当てはまらないようでした。「異性が話すと魅力的」「福島弁はかわいい」と思う人はいずれも過半数に届きません(福島県出身者885名)。

近年の若い人たちの間では,博多弁,京都弁,津軽弁などが「かわいい方言」とみなされているようですが,これらはいずれも,当該地域出身の芸能人がメディアなどで時折(人によっては常に)使用している方言です。福島県出身の若い芸能人が,同様にメディアで福島弁を使用していけば,福島弁への評価が変わってくるものと思われます。

文献
井上史雄2000『日本語の値段』大修館書店
田中ゆかり2011『方言コスプレの時代』岩波書店

Q9一見怖そうな人が福島弁を話していると、優しい印象に変わる

Q10初対面の相手が福島弁を話していると、標準語よりも緊張しない

コミュニケーション活性化に、福島弁は役立つのか?年齢が上がるほど、親しみやすさは上がる傾向に

フラットなイントネーションの福島弁には、「穏やかな印象を与える」効果があるのか、上記のようなふたつの質問の結果もみてみましょう。福島県内出身者では「福島弁を話していると、優しい印象に変わる」に「はい」と回答した人は約53%、「相手が福島弁を話していると、標準語よりも緊張しない」に「はい」と回答した人は約67%でした。ただし年齢によって差がみられ、いずれも高年層の方ほど「はい」という回答の割合が多くなっています。

人間は自分と同じことばを話す相手に自然と親近感を覚え、同じ仲間とみなします。毎年のように新しい若者ことばが生まれるのは、若い人たちがことばによって自分たちの仲間意識を確認・強化しているためでもあります。

方言にも同じ働きがあるので、同じ方言を話す人に対すると自然と緊張がほぐれ、親しみを感じやすくなるわけです。福島弁とより長く接し、福島弁を話している年配の人ほど「はい」の割合が高いのもうなずける結果と言えるでしょう。

Q11福島弁って、どんなイメージ?6種のイメージ調査

「情的」と「知的」とは?「福島弁の安心感」は全ての年齢共通

福島弁のイメージについて,これまでに示した「かわいらしい」「誇りに思う」以外の結果も見てみましょう。いずれも「とてもそう思う」と「まあそう思う」の合計です。

県内出身者(885名)では,「かっこいい」を除く5イメージの指示が高くなっています。日本各地の方言は,大きく「情的評価」と「知的評価」の2種類の評価次元で位置付けられることが知られています(井上史雄1989)。「情的評価」とは「やさしい・素朴だ・温かみがある」といった,いわばふるさと,郷愁イメージと結びついた評価であり,一方「知的評価」とは「近代的だ・歯切れがよい・おしゃれ」といった洗練性,都会的な観点の評価です。東北方言は従来,情的評価ではプラス,知的評価ではマイナスに位置付けられますが,今回の結果もそれを追認します。「親しみやすい,素朴,温かい」は情的評価,「かっこいい」は知的評価とみなされるので,県内,県外出身者のイメージはほぼ一致します。

「なつかしい」については,小さいころから福島弁を耳にしてきた県内出身者と,そうではない県外出身者で認識が異なるのはよく理解できますが,一方で興味深いのは「気分が落ち着く」の結果です。県内出身者が母方言を聞いて安心するのは当然としても,県外出身者の中にも少なくない賛同がみられます(50%弱)。もしかすると,無アクセント,尻上がりのイントネーションを持つ福島弁の話し方が,精神の安定に一役買っているのかもしれません。

文献
井上史雄1989『言葉づかい新風景(敬語と方言)』秋山書店

まとめ・今後の目標

好感度や知的イメージは低いという結果に終わりましたが、 気分が落ち着く親しみやすいといった情的なイメージは高い評価を得ているようです。
この特徴に注目して、
「小さなお子さんでも、福島弁を聞くと安心感を抱くのか?」
「初対面の人でも福島弁を使うことで緊張がほぐれるのか?」など、
日常のあらゆるシーンで 福島弁が役に立つ場面を発見していきたいと思います。気になる実験結果は、PROJECT.01と02の動画をご覧ください。

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